燃費測定モード WLTCの落とし穴
フランスの超小型電気自動車(BEV)Citroën AMIは、BEVとしてどの程度の特性か、日産の軽BEVサクラと比較しました。その際に、AMIの燃費測定がWMTCとあり、誤植かと思い調べてみました。
誤植ではありませんでした。
が、国際的な統一計測法だと思っていたWLTCに大きな落とし穴がありました。
消費者や日本国内での検討においては何も問題になりませんが、国際比較をレポートする我々アナリストは注意が必要です。
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満充電での走行距離
小型電気自動車(BEV)のシトロエンAmiに関してレポートしてきました。
その中で日産の軽BEV サクラと比較しました。
以下の表です。
電気自動車は満充電での走行距離が気になるところで、各社のカタログ等の最長走行距離に注目しています。
現在はWLTCモードでの計測値となっています。
ところが、AMIのカタログではWMTCでした。
調べてみるとそれぞれ
WLTC: Worldwide harmonized Light duty Test Cycle
WMTC: Worldwide harmonized Motorcycle Test Cycle
ということで、どちらの計測方法も公式なものでした。
AMIで採用したWMTCはまさにMotorcycle、バイク向けの計測方法です。
超小型BEVだから採用したのでしょうか?
あるいは、フランスの法規で適用計測方法が規定されているのでしょうか?
背景はわかりません。
燃費(電費)表記
日本における燃費標記の変遷です。
現在のメーカのサイトやカタログの表記は、WLTCの燃費測定モードでの計測値で評されています。
WLTCは「市街地モード」「郊外モード」「高速道路モード」あるいは、Low/Medium/Highの3つの走行モードとその総合値で表記されます。
簡便に総合値だけで代表されることも多いようです。
さて、高速走行は、100km/hを基準として80-120km/hで変化させます。さらに短時間ですが、最高速度130km/付近で100秒ほど連続的に走行する超高速モード(ExH)があります。以下の、環境省の報告書のグラフを参照ください。
日本のWLTCではExH部分が除外される。
さて、問題点は、上記グラフ中の赤線のExtra HIGHの部分です。日本では120kmといった超高速での走行時間(距離)が極めて少ないために、この部分が除外されています。以下も環境省報告書からの引用ですが、この中のExH3の部分が除かれています。なお、class分けは出力重量比に基づくものですが日本では、大半がclass3に該当するとされるために、class3のみが制定されました。
*1の注記にもあるようにこの部分は各国の判断で除外することが認められています。環境省の報告書には、統計的検定の結果として除外することで日本での走行実態を反映するとされており、合理的・科学的判断です。 参考までに、国道交通省/経済産業省の報告書からも該当部分を引用します。
BEVではExHの有無で走行距離が大きく異なる
問題点はこの点です。
同一計測法で比較している分には、当然問題は無いので、日本国内向けのカタログ同士の比較は何ら問題ありません。
一方で、日本向けのカタログとたとえば欧州向けのカタログを比較する際は要注意です。
というよりも、比較が適切でなくなります。
同じBEV、同じ電池容量で比較した場合、ExHモードを含まない場合、たとえば15%程度走行距離が長くなるとの報告もあります。
WLTCは Worldwide harmonized Light duty Test Cycleの略ですが、この中の「国際調和」という言葉から、全世界共通の規則と思い込んでしまいます。
しかし、前述のように、各国の状況やニーズに合わせてExHの取り扱いが異なり、計測値が異なってきます。
この辺りを理解しないで、日本のBEVの走行距離は長いので優秀だ、などと誤解してはいけません。
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