電気自動車の普及状況の調査のための台湾訪問に関しては既に数報ご紹介しました。
台湾BEV 現地調査 

今回の調査での最重要ポイントは2点でした。 一点目はGogoroの、車を(正確には車ではなくバイクですが)売らない永続的収入ビジネスです。こちらは以下で報告済みです。 
台湾BEV 現地調査 GOGORO 電動バイクの電池サブスク  

そして二点目が今回レポートする、既存自動車メーカーではない、鴻海(ホンハイ)の自動車ビジネスへの参入です。 

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裕隆汽車系のプレミアムブランドのLUXGENから発売されたn7は台湾初(開発および製造として)の乗用車系電気自動車です。開発のベースは、電子機器受託生産(EMS:Electronics Manufacturing Services)のグローバルTOP企業鴻海精密工業(ホンハイ)発の電気自動車開発コンソーシアムのMIH(Mobility In Harmony)のモデルCです。今回の調査、LUXGENでのインタビューや試乗、現地情報通との面談を通じて、鴻海(ホンハイ)精密工業のBEV世界戦略がよくわかりました。 
その一部をご紹介しましょう。 

本レポートの目次 
以下も含めての総合的な解説に関しては、 
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・台湾自動車産業の歴史 
  日系からの学びで・・・ 
・TESLAの初期車両は台湾に依存 
  モーター開発援軍は台湾で・・・ 
・鴻海による台湾BEVの世界化 
  当初狙いの製造請負から・・・
・鴻海/TMCSの世界戦略 
  台湾政府の影が・・・ 
・日本の自動車産業ビジネスへのインパクト(詳細) 
  材料も部品も危機的・・・ 

台湾初のBEV LUXGEN n7 とは 

これこそまさに、鴻海発のBEVです。後述のMIHでの開発プラットフォームを販売ブランドLUXGEN向けに味付けしたオリジナルBEVです。 

LUXGEN n7 については既にレポートしていますので、以下から参照ください。 
LUXGEN n7  市場展開状況/ショールーム訪問インタビュー/試乗 

LUXGENは裕隆集団のプレミアムブランド名です。裕隆汽車は60年以上にわたり日産自動車と技術提携しており、現在、日産ブランドは裕隆集団傘下の裕隆日産汽車が製造販売しています。裕隆集団傘下の自動車メーカーとしては、ほかに中華汽車があります。商用車を中心にオリジナル開発車両を製造販売しています。街中で見かける小型商用バンはほとんどが中華汽車でした。 

台湾BEV 現地調査 台湾初の電気自動車 LUXGEN n7

EV開発のオープンプラットフォーム MIH (Mobility In Harmony)

鴻海による MIH(Mobility In Harmony)コンソーシアム設立は2020年10月です。当初、十数社から始まったコンソーシアムですが、現在では100社前後となっています。日本からのOEMや主要Tierの参加は少なく、自動運転関連のTIER Ⅳや豊田通商が目立つ程度です。一方、欧州や中国からは自動車関連の大手企業の参加も見られます。近年、特にステランティスとの関係が深まっているようです。 

新興EVメーカーからの受託生産は大きなターゲットですが、新興EVメーカーのビジネス自体が順風満帆とはいえず、さらに最近のEV普及鈍化もあり、大きな成果につながっていません。一方で、台湾国内ではMIHベースのEVの実用化が始まっています。今回の訪問調査の主目的であったLUXGEN n7もこの流れに基づくEVです。 

Japan Mobility Show2023におけるMIHの展示 

2023年10月東京ビッグサイトでの展示会です。MIHコンソーシアムとして大きな出展スペースでした。
写真は展示ブース上部にあるMIHの解説と主要スポンサーと思われる会社紹介です。
MIHとは A Foxconn-initiated Open EV alliance と謳われています。 

なお、フォックスコン(Foxconn)とは、実質的に鴻海精密工業と同等です。アメリカや中国などの海外ビジネスの際には、ホンハイ(鴻海)とは称せず、Foxconn(中国本土では富士康科技集団)と呼ばれています。 

上記写真の主要スポンサーを見てみると、モビリティ走行のためのハード・ソフトさらにその周辺の企業とともに、EVを活用したビジネスを狙っている企業がメインです。 

いくつか解説します。 

gogoro:台湾の電池交換式バイクを核としたサブスク運営企業 
Hakobune:住友商事系の通勤用EVの提供と発電や蓄電等の周辺ビジネス企業 
Tech Mahindra:インドのマヒンドラ系の通信・情報IT・AIなどデジタル系企業 
TIER Ⅳ:名古屋大発のスタートアップ、グローバルな自動運転オープンウエア 
Infineon:ドイツの半導体メーカー、車載半導体のグローバルメーカー 

Japan Mobility Show2023の展示車両から 

2車両を紹介しましょう。小型トラックB-ON(写真左)と小型EV(写真右)です。

B-ONはルクセンブルグの商用EVメーカーであり、日本市場への売り込みを前面に出した展示でした。2~3人乗りとシートアレンジが可能な小型BEVも展示してありました。全幅は一般的な乗用車と同じ1840mmながらも全長は3020mmと短いです。走行距離は150kmですが、gogoroの交換バッテリーを搭載可能であり、20kmの走行距離延長が可能です。タイやインドをターゲットに、短距離移動と小物物流用途を狙っています。 

鴻海の狙いは何か? 

電子機器受託生産(EMS:Electronics Manufacturing Services)のグローバルTOP企業は鴻海(ホンハイ)精密工業です。その鴻海は2020年にEV開発のオープンプラットフォームとなるアライアンスを設立しています。その狙いは何でしょうか? 
もちろん、最大の、そして当初の唯一の狙いは、自動車の受託製造し、相手先ブランドで供給するという自動車版EMSでした。しかし、これまでの状況を見てきたところでは、少しずつ変化しているよう様にも見て取れます。 

当初のEMSの場合、設計開発は発注元側となります。一方で、現在のMIHの活動は複数モデルのBEVプラットフォームを開発していますが、これらはMIH主導です。新興のBEVメーカーの撤退などもあり、生産委託側から発注仕様・設計図を受けて追っての製造とはなっていません。MIHが自ら開発し、各社に提案するという色合いが強くなっています。前述のB-ONもその流れです。小型BEVは売り込み中で、状況によってはMIH、あるいは鴻海自ら製造時自社ブランド発売も考えられる状況です。 

これは大きな変化で、エンドユーザー向けの設計能力を保有することになります。 

もう一点重要な点は台湾の産業育成です。もちろん、鴻海がこれを狙っていたわけでもなく、現状でも積極的にこの方向にあるわけではありませんが、今後のビジネスやサプライチェーンを推定すると色濃く感じられるところです。結果としてこれは、鴻海にとっても台湾政府に取ってもメリットのあるところです。 

台湾での普及は充電インフラとの同時拡大で 

TESLAは当初から自社で充電インフラを展開する戦略でした。TESLA車を販売している地域・国ではスーパーチャージャの展開と販売展開が同時展開です。 
中国は政府主導で充電インフラを展開し、追加的にBEVメーカも自社展開しています。
ベトナムVinFastもTESLA同様の展開で、自社で充電インフラを整備しています。 
台湾はどうでしょうか? BEVメーカーも販売店中心に充電インフラを整備を進めていますが、主として商機ありとみた充電インフラ企業が展開しています。産業構造的にはBEV充電インフラに関連する部品メーカーのすそ野が広かったようです。もちろん、これまでは輸出ビジネスでしたが。 

日本の自動車産業ビジネスへのインパクト 

鴻海みずからが設計の力を持ちグローバル販売に向かう場合、日系のシェアを奪うと考えられます。特にBEVで出遅れているところですので、日系には厳しい状況となる可能性が高いでしょう。 

このことは、日系自動車メーカーにとどまらず、日本の自動車サプライチェーン全体、Tier1以下の部品メーカーや原料素材メーカーのビジネスにも影響が懸念されます。タイ出張調査からも日系全体の厳しさを感じて帰ってきたところでもあります。 

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