最新水素タンク情報 複合材料学会 オンライン大会から
第12回 日本複合材料会議
講演プログラム
高圧水素タンクに関する最新動向をまとめます。
「第12回 日本複合材料会議」初日(2021年3月2日)前半から
初日のC会場は終日、CFRP水素タンクがテーマでした。
本ブログでは、その前半を報告します。
さらなる詳細は、弊職が講師を務めるCFRP関連のセミナでのご紹介を予定しています。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構( NEDO)の講演から始まりましたが、燃料電池に対しての産官学の総合的な取り組み状況を象徴するものでした。
1C-01
2030年以降に向けたFCV用水素貯蔵技術開発におけるチャレンジ
原 大周(NEDO)
NEDOの燃料電池水素ロードマップが示され、方向性・目標をご説明していました。この活動の大きな特徴は、産官学が協調しており、特に、産の代表としてFCVのトヨタ自動車とホンダが、中核的に問題提起している点にあります。その詳細は後述します。
キーとなる活動をメモしました。
▶ FCV課題共有フォーラム (燃料電池)
▶ FCV水素貯蔵課題共有フォーラム (水素貯蔵)
▶ FC-Cubic
なお、ちょうど4月8日締め切りで、開発テーマが公募されています。
ご興味をお持ちの方を以下からアクセスしてください。
「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」に係る公募について
講演後に、東京大学の吉川先生が
「普及のためには、国全体のサプライチェーンを考える必要があり、まずは水素を安くしないといけないがその取り組みは?」とのご質問があり、
ご講演者は「今日は貯蔵技術関連の講演であったが、水素製造の革新は取り組んでいる」とのご回答でした。
日本の場合、そもそもの水素が高く、特にグリーン水素がかなり割高になります。風力発電を中心とした次世代エネルギへの取り組みが遅れたことが問題と私見しており、水素エネルギ社会実現の大きなハードルです。
1C-02
水素タンクの低コスト化に貢献する新炭素繊維の開発
入澤 寿平(名大)
炭素率の高い繊維を前駆体として、プロセスコストの高い耐炎化処理を簡略化するとの着眼での取り組みです。この物質のコストダウンが課題です。ご自身も参画されたNEDOでの取り組みでは、ポリ[ビス-(ベンズイミダゾベンズイソキノリノン)](PBB)など新規な芳香族系高分子を前駆体とすることで、耐炎・不融化処理が不要のため安価となります。
他に、アメリカでの、安価でバイオマス材料でもあるリグニンを原料として耐炎化・不融化処理が短時間とする研究のご紹介がありました。ただし、特性がそれほど高くなっていません。
1C-03
CFRP水素容器のマルチスケール設計解析技術の開発
横関 智弘(東大)
FWは製造ばらつきが大きい工法のため、試験片の再現では済まないために、マルチスケール解析でそれらを再現するという現在進行中の研究です。
ポイントは、
・疲労解析して残量強度予測(CFRPの疲労損傷累積)
損傷力学ベースで疲労低下を再現
・層間はく離も 層間要素も損傷低下再現
これらも有限要素の各要素で再現するという取り組みです。
ミクロモデル・・・ミクロな材料構成や初期不整を考慮
メゾスケール・・・CFRPの複雑な破壊モードを考慮
1C-04
車載機器用高圧水素適合性高分子材料
西村 伸(九大)
ステーション側の水素のシール材の研究者からの
タンクのライナ樹脂の水素透過抑止特性研究報告です。
滋賀県立大学 量子科学技術研究開発機構と 放射線を導入し熱可塑に架橋点を作る研究の報告です。
1C-05
電子線照射を利用したCFRTP製高圧容器の新規な現場含浸型製造プロセス
西田裕文(金沢工大),稲垣昌輝,山下博,金崎真人(岡山県立大),長福紳太郎(JAXA),紙田 徹,鵜澤 潔(金沢工大)
熱可塑樹脂に電子線を照射し、その場で含浸固化することでFWタンクを作るプロセスの検討です。スーパーエンプラは融点が高いため、モノマー相当の物質を混ぜ融点を低下させることで加工性の向上を図ってます。スーパーエンプラとしてはモノマーとの相溶性、加工時安定性などからPESが選定されてます。
1C-06
機械学習法に基づくCFRP製圧力容器の最適設計技術の開発
横山卓矢( SUPWAT ) ,吉川暢宏(東大生産研)
株式会社SUPWATからの発表です。同社は、東大発のベンチャ企業です。
東大での水素タンク設計における開発したAI機械学習ツールをビジネスとしています。ここでは、TypeⅣの最適化に活用した例を発表してました。