2021成形加工学会年次大会 リサイクル関連 注目の講演
6月16日~17日 オンラインで開催された
「プラスチック成形加工学会 年次大会」に参加しました。
当事務所のビジネスエリアを中心に、注目した講演をサマリとしてご紹介します。
今回はリサイクル関連の2件をご紹介します。
1件目は、簡便な装置機構によるバージン材並みの物性確保への期待
2件目は、再生材成形条件検討にAI手法を活用している点
がポイントです。
[B206] 高度マテリアルリサイクルによる資源循環
福岡大学 八尾 滋
まだ始めたばかりのご研究ということですが、対応のアイデアがユニークで拡張性が高いように感じました。
2軸押し出し機の先端に樹脂だまりを設けることで、高分子の絡み合いが回復し、バージン材並みの引張特性が得られるというご研究です。
NEDOの長期研究の一貫です。
革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発 材料再生プロセス開発(2020―)
[F-202] 金型内センサを活用したリサイクル材の成形条件最適化
日立製作所 研究開発グループ 八木大介、中土裕樹、島田遼太郎、小林漢
<研究の狙い>
現状の主流であるメカニカルリサイクル(粉砕し再度溶融し成形する)に向けた技術です。
リサイクル材の物性がばらつく変動に対応可能な技術として開発
<従来技術の課題>
あらかじめ複数の成形条件での試験を元にしたDBから、応答曲面を求め、このRSMから逆解析で最適成形条件と求めるとの手順です。材料ロット変動は織り込んでいません。材料は標準物性の一種となっているので、リサイクル材の変動に対応した最適成形条件は読めないことが課題です。
<本技術の特徴>
成形品の特性値として、もっとも低コスト、かつ一般的な重量に着目しています。
私の経験にも合致しています。成形品質の概要は重量で代表できる。逆に言えば、まずは重量管理を確実に実施することが重要です。
みなさんも、まずは成形品の重量計測と管理から品質問題に着手してください。
最適化手順
① 実験による学習DB構築
実験計画法 成形条件×再生材ロット変動
型内センサから圧力情報を得る。 同一条件で成形しているので差は材料ロット分のみが寄与する。
② サポートベクター回帰による学習
③ 1ショットのみ成形し、センサ特徴を把握
時系列センサ情報から樹脂状態に相関する特徴量を把握。
網羅的把握で60次元となる。教師無し学習法U-MAPにより2次元に情報圧縮。
上記を組合せ、材料ロット変動の際に 逆解析で成形条件を求める。
<聴講内容に関するコメント>
品質変動しがちなリサイクル材の成形条件安定化に機械学習を活用する点がユニークである。型内圧力センサの情報と成形品重量のみから特徴抽出している点もシンプルである。今後、成形情報の蓄積DBを元にした予測により、実験によるDB構築不要とできると考えられる。
リアルタイム型内圧情報から直接的に成形条件を制御するといったデジタルツインに通じる技術として着目した。