X線タルボ・ロー干渉計測とは

X線タルボロー計測法に関して継続的に情報収集してきました。

複合材料学会のオンライン学術発表「第12回 日本複合材料会議」に関してのブログでX線タルボ・ローに関しての発表をリポートしました。

X線タルボ・ローは、樹脂やCFRPなどの内部欠陥やCF分布などを広範囲に、なおかつ微細にも計測できる技術です。
ということで従来から継続的に調査しております。今回は、この計測方法に関して記載します。

さらなる詳細は、弊職が講師を務める各種樹脂関連のセミナでのご紹介を予定しています。

最初は生体観察用

この計測法は日本でのオリジナル発明のようです。東北大学の百生敦教授が東京大学時代に開発しました。従来、タルボ干渉観察のためにはシンクロトロン放射源放射光が必要でしたが、格子を二重にすることでロー効果のモアレ像が得られることを発見しました。これにより、一般X線源での短い露光時間での観察が可能となりました。試料への負担が少なく軽元素でも詳細に撮影できることから、当初は医療分野、生体観察に活用されていました。

科学技術振興機構(JST)からは2011年に東大百井准教授(当時)とコニカミノルタによる生体観察成果が報告されています。

1万分の1度ほどのX線の屈折を利用した革新的X線撮影装置を開発
-乳がんやリウマチの早期診断を可能に-

工業分野 特に樹脂部の観察に適用拡大

X線吸収係数の小さい樹脂などの部材の検査にも活用が拡大しており、CFRP内部の微細なクラックやボイドなどの観察にも応用が拡大しています。
2013年にはIC封止材の欠陥観察を例として、学会誌(Journal of Applied Physics)に産総研と東北大学の百生教授の研究成果が発表されています。

産総研のサイトにはその際の情報が、原理と観察例とともに示されています。大変に理解しやすいものですので引用しました。

写真の解説です。

(a)X線吸収像(従来のX線非破壊検査法)、(b)X線位相微分像、(c)X線散乱像、(d)内部の概略図。

(b)では表面の傷などが、(c)では内部のシリコン基板や窒化アルミニウムのクラックが見える。これらは従来のX線非破壊検査方法である(a)のX線吸収像では全く観測できない。

産総研のサイト

X線吸収像では観察困難な微細欠陥も位相微分像(位相コントラスト像)や散乱像として観察が可能となります。吸収像で位置を特定し、微細な欠陥は位相や散乱像で観察するという利用が一般的なようです。

2016年には科学技術振興機構(JST)から百生教授×リガクの共同開発が発表されてます。こちらのモアレ干渉原理図と観察例も理解を助けますので引用しています。
リガクのサイトも参照ください。
リガクWebSite「X線の屈折・散乱を画像計測する非破壊検査用高感度X線スキャナの開発」 −工場生産ラインでの実用化に目処

装置メーカ情報

以下の各社で取り扱いがあるようです。
各社のサイトにもいろいろと有用な情報がありますので、参照ください。

コニカミノルタ
リガク
島津製作所
日本複合材料学会主催 「第12回 日本複合材料会議」(2021) 

2B-05
X線タルボロー干渉計によるランダム配向テープ強化型CFRP のテープエッジ検出~エッジ密度がCFRP強度特性に及ぼす影響~

3D-03
不連続炭素繊維ランダム配向積層板のX線位相イメージングによる繊維配向解析と配向データを用いた損傷解析
(金沢工大)白井武広,鵜澤潔, (島津製作所)木村健士,土岐貴弘,森本直樹, (アドバンステクノロジー) 黄緒明