2021自技会 学術講演 トヨタ水素タンク 疲労CAE

5月26日~28日 オンラインで開催された
「自動車技術会 春季学術講演会」に参加しました。

自技会の新ロゴマークです。

学術講演会プログラム一覧&検索はこちらから

CFRP 破壊モードを考慮した高圧水素タンク疲労破壊予測モデル開発 [#134]

トヨタ自動車 西原寅史・金子智徳・原田岳

従来の2次元軸対象モデルでは、繊維交差部の正確な再現や層間剥離挙動の再現ができないために疲労予測には活用できませんでした。一方、正確に3次元形状を再現し繊維の一本一本や樹脂との界面の有限要素モデル再現は膨大な計算時間を要し、タンク開発での実用的な開発には適用できないとの課題があり、対応した開発に関する報告です。

鉄筋コンクリートCAEの「埋め込み要素法」の活用

同じような複合材料である鉄筋コンクリートに着目し、そのCAEで活用されている「埋め込み要素法」を応用しています。「埋め込み要素法」では、鉄筋とコンクリートを仮想ばねで締結している。

3D積層の正確な再現のために、積層構造が複雑となるドーム部にはfrontCOMPを活用しています。解析にはLS-DYNAを使用し、複合材の破壊モデルカードについても具体的なカード番号まで紹介されてました。

疲労予測のため手法も、UD材の疲労試験SN特性を当てはめるなど、各所に実用化のための工夫がされています。

破壊モデルの検討に際しては、実際の破壊タンクの観察からその再現手法を選択するなど、真に実用化を目指しての開発です。

そのような取り組み姿勢もそうですが、具体的な解析ソフトや手法にも言及されており、そこも含めて大変に参考にできる報告でした。容易に模倣されるだろうと危惧してしまいますが、そこも承知の上での自信ある発表でしょう。失礼ながら、まじめにメカニズムを再現しようとする大学やCAEソフトベンダーでは実現できないような成果でした。

3パターンの精度検証結果を紹介していましたが、「実測とCAEの予測順位は一致しているから定性的に合致している」としており、いかにも実務活用を目指したトヨタらしい発言です。(図は、前刷り報文からの引用です)

このCAE実用化により、従来の疲労の実試験と比べて、評価期間が1/3、費用は実に1/500程度となっています。


以下のブログもご参照ください。

水素エネルギ社会(23)トヨタの新型MIRAI