「本音」 トヨタ自動車の豊田章男社長
昨日のブログで、
「建前」のオンライン会見 自工会 豊田章男会長 トヨタ社長の思いとは異なる発言
とのタイトルで、12月17日の 自工会オンライン会見に関して記載しましたので、今回は、トヨタ自動車の社長の立場での本音を探ってみます。
自工会の会長の立場での発言はかなり保守的でした。
電力のエネルギの内訳は昨日も記載したように以下のように説明していました。
<発電内訳>
日本 火力 77% ⇔ 再生可能エネルギー&原子力 23%
ドイツ 火力 60%弱 ⇔ 再生可能エネルギー&原子力 47%
フランス 火力 11%弱 ⇔ 再生可能エネルギー&原子力 89%
この直後に、
- EV 400万台となった場合、電力不足で10-15%の発電能力の能増必要
- それをまかなうためには 原発+10基、火力なら+20基の新設が必要
- これら発電所新設も含めて全体として14-37兆円の投資が必要
- うち、家庭で10-20万円 集合住宅で50-150万円 急速充電機は600万円の投資が必要
- EV車用の電池供給能力 30倍以上必要
- EV完成時の充放電試験で家一軒の1週間分の電力を消費、これは、毎日5000軒分の電力を消費に相当
など、具体的な影響を説明していました。
EV完成時の充放電試験は、EVのシステム信頼性が向上すれば自然と不要となると見込まれますので、わざわざ声高に取り上げるまでもない軽微な内容だと思いました。保守的な なんでも反対姿勢に見て取れ、違和感がありましたが、自工会会長の建前を演じたものでしょう。
会見の冒頭では、自動車工業がいかに炭酸ガス削減に貢献してきたかをかなり詳細に、具体的な数字を挙げて紹介していました。以下に、私が聞き取った内容をまとめます。
CO2排出量
2.3億トン(2001) →1.8億トン(2019) 22.5%削減
平均燃費(JC08モード)
13.2 km/l(2001)→22.6km/l(2018) 71%向上
次世代車比率
3%(2008) →39%(2019) 36%増加
また、これは、(新車)電動車比率として 世界2位の35%(1位はノルウェー68%)日本は新車台数 150万台であり53万台、一方のノルウェーは新車10万台であり、(わずか)7万台となる。(イタリック部は筆者が追記)
自動車製造時の工場CO2排出
990万トン(1990) →631万トン(2018) 36%削減
これだけ貢献してきているのに、政治家や報道が過激に電動化推進というのはいかがなものかという論旨を感じました。
ただ、それぞれの数値の年次がバラバラで、都合のいいデータを持ってきたか、あるいは取り急ぎ手元にあるデータで説明しているように見受けられ、これも違和感がありました。
しかし、昨日も記載したように、グローバルの潮流であり、日本だけが対応時期を遅くしても、グローバル開発競争から取り残され、それこそ自動車産業は壊滅すると考えるのが合理的です。
自工会の会長の建前とトヨタの社長としての本音は明らかに違うでしょう。
トヨタはご存知のように、HVで大きなイニシアティブを取りました。環境にやさしい会社というブランドとともに、利益にも大きく貢献しました。かたや、フォルクスワーゲンは、北米でのディーゼル不正でのブランド棄損とともに、台数も足踏みしました。
欧州は本来はディーゼルで環境対応を食いつなぐ戦略でしたが、フォルクスワーゲン事件以来、ディーゼル車での対応が困難になり、急激にEV開発にシフトしました。今年になり、フォルクスワーゲン、BMW等が矢継ぎ早にEV車を上市しており、成果が出てきました。EUでのEV化が加速します。
一方、トヨタのEV化はまだ表に見えてません。HVで得た、膨大な利益をEVとFCVの開発に投資しています。また、HVの20年以上、1000万台以上の走行データは、制御システムの効率化検討には絶大な力を発揮するものと思われます。EVの開発は電池開発競争と言われますが、トヨタは全個体電池の世界有数の開発機関でもあります。トヨタが一気に有利になる可能性を秘めています。全個体の開発が遅れる場合には、戦略的にリチウムイオン電池で時間を繋ぐ可能性もあります。
以上のような状況であり、これらの開発に全力で集中する、これが、豊田章男社長の本音だと思います。
個人的見解ですが、トヨタ以外の日本の自動車メーカは、グローバル開発に太刀打ちできないとの危機感を強く持っています。
自工会会長としては、それらの代表であり、保守的な会見となった背景はこの辺りにあるのでしょう。
2000年を基準とした、トヨタ自動車の売り上げと、日経平均株価、およびトヨタ自動車の歴代社長の在任期間をまとめてみました。このグラフを見るとリーマンショックで大幅に売り上げが落ちたタイミングで豊田章男社長に変わり、数年掛かりで回復した状況が見て取れます。就任の翌年2010年の2月には北米議会でのトヨタバッシングがあり、公聴会に召喚されています。ちょうどこのころ、社長に近い部署にいたので、日々の状況をヒシヒシと感じていました。いろいろな裏話的なうわさも含めて。
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