SONYとHONDA 2025年EV発売へ

ソニーとHonda 合弁でEVを開発・販売へ

CES2020でのVISION S発表以来、ソニーのモビリティをウオッチングして来ました。年初のCES2022では、3月にソニー・モビリティを設立しビジネスの可能性を検討するとしていましたが、一気にホンダとの合弁会社の発表となりました。

以下は、両社のウエブサイトのニュースリリースです。当然、文面は同じです。

Honda | ソニーとHonda、モビリティ分野における戦略的提携に向けて基本合意

ソニーグループポータル | ニュースリリース | ソニーとHonda、モビリティ分野における戦略的提携に向けて基本合意 (sony.com)

ニュースリリースの文面から、背景やこれからの戦略が読み取れますので解説します。もちろん、想像・推定での独自コメントです。

2022年中の新会社の設立、2025年から販売

わずか3年で新開発車を販売するという驚異

自動車会社の経験からして、わずか3年で全く新しい車を開発販売することはほぼほぼ不可能です。ここから読み取れることは、走行系の基本プラットフォームは既存(あるいは今開発中の)ホンダの車両をベースにするということです。

ニュースリリース中のホンダの三部社長のコメントに
「Hondaの持つ最先端の環境、安全に関する知見や技術の提供などを通じ、両社の有する技術アセットを結集し」とあり、技術面での貢献と読み取れますが、既存(開発中)のクルマを活用すると読み取ると、3年という短期が現実的となります。

製造設備を所有しない会社として、ホンダへの生産委託は容易に想定できるところでした。

ソニーの狙いはエンタメと自動運転、そしてソフトビジネス

ソニーの吉田社長コメントに「セーフティ、エンタテインメント、アダプタビリティの三つの領域を軸に」とあります。セーフティは自動運転を視野にしています。これは2020年のVISION S01発表の際から明確なターゲットとしています。アダプタビリティはconnectedに通じる要素と読み取ると、ソフトの書き換えで自動運転を始め、進化するというソフト戦略が読み取れます。

エンタテインメントもソニーらしい強みです。表示機能としてのハード、映像コンテンツ、そのオンライン配信ソフトビジネスです。

写真は、S01の際に発表されたPanoramic Screenです。巨大な横一枚パネルで、この両サイドにはカメラで撮影した映像を映写したサイドミラー機能となってます。

S01の際に発表されたPanoramic Screen

EVとしての機能は?

「モビリティ向けサービスプラットフォームについては、ソニーが開発し、新会社に提供する」という点がかなり気になりました。想像される点はありますが、少しナーバスなので、記載は見合わせます。

自動運転機能は限定的搭載かもしれません。開発期間3年では評価熟成度が上がらず自身のある部分だけとなりそうです。ただ、ソニーがモビリティに参入した主たる狙いがセンサーという点を考えると、意外と先進的なEVとして出すのではという期待もあります。センサーとその情報のソフト的処理、その走行系制御を考えると、ソニーとホンダの連携の真髄が見えてくるでしょう。この連携がうまくいくほど、EVのレベルが高まります。

クルマを越えた価値

ソニーが進出する狙いそのものです。単なる移動手段から、楽しめる移動空間へと変化します。これが新しい価値です。そのためには、エンタテインメントの充実です。

この点は、当サイトでしばしば紹介している中国の新興EVメーカのHuman Horizonsも同じ視点ですので、同社の例で紹介します。写真は、昨年5月に市販を始めたHiPhi Xに試乗した際に撮影した、フロントの3面Displayです。助手席のDisplayはエンタメ専用です。ソニーのPanoramic Screenの助手席側と同様の狙いです。

HiPhi Xフロントの3面Display

ただ、ここで紹介した表面的なエンタメではなく、五感で感じるクルマになっています。たとえば、ゲームエンジンの企業EPIC GAMESとのタイアップなども発表されており、どのような狙いかが気になるところです。サウンドやビジュアルはconnectedを生かして、季節やクリスマスなどのイベントとも連携しています。

4月の北京モータショで公開される次期車両セダン系HiPhi Zのデモビデオをご覧ください。

Human Horizons(華人運通) 新モデル発表

ビデオではビジュアル系のエンタメしか確認できませんが、それだけでも感動ものです。外装も内装も自由自在に光ります。

ソニーがどこまでの、「クルマを越えた価値」を出してくるか、大変に興味深いところです。

狙いのカテゴリー戦略

ニュースリリースには記載がありませんが、日経の報道によると、記者会見でホンダの三部社長が「ホンダ本体のEV戦略とは別に取り組む」「ホンダとは全く異なる事業として展開する」と語ったとされています。この合弁の進化系を想像する際に、この発言は極めて重要な点を示唆しています。この点もきわめてナーバスな話題ですので、対面でお話しできる機会にでもコメントさせていただければと考えています。

前述の中国の新興EVメーカHuman Horizonsのカテゴリー戦略が参考になるかもしれません。同社が昨年5月に市販を始めたHiPhi Xは、2021年下期、50万元(900万円)以上のカテゴリーで最も売れた車となりました。(価格は65~80万元、1200~1500万円)

ソニーとホンダの合弁も、おそらく高級車のカテゴリー狙いでしょう。しかし三部社長の言葉から、ホンダの高級ブランドのACURAとは異なる事業を狙うということでしょう。ただ、額面通りに捉えらえないようにも感じています。

トヨタの戦略とApple Carの動き、Hyundaiは?

ソニーと同類のApple、ホンダと同類のHyundaiやトヨタ自動車の動向が気になるところです。この3社の動きに注目しています。

Hyundai(年産700万台)やトヨタ自動車(1000万台)の規模を考えると、対等の合弁は難しく、ある種の主導権争いといった「きな臭さ」も感じられるところです。

ホンダと同規模かやや小さい会社としては、フォードやダイムラー、BMWの連携や合弁も気になるところです。意外と、元気者のBYDあたりが受託生産狙いで新興企業とタイアップするかもしれません。