家庭から回収した資源プラスチックを再資源へ。

このための、最新リサイクル工場を見学する機会を得ました。
株式会社TBMの横須賀サーキュラー工場です。

本レポートの目次 
1 家庭からの資源プラ
 1-1 資源プラスチックのリサイクル工場 見学
 1-2 そもそもの家庭からの資源プラの再資源化について
 1-3 脱炭素のために家庭でできること
2 株式会社TBMの脱炭素ビジネス
 2-1 石灰石から作った紙や容器など
   【プラスチックと成形加工関連 Tech-Tセミナーご紹介】
 2-2 資源循環プラットフォーム事業

同社は、石灰石を主原料とした環境配慮型材料の開発・販売事業のために設立された会社ですが、環境対応事業の拡大として、今回見学したリサイクルプラントや、さらにはリサイクル樹脂材料のニーズとシーズをマッチングさせる資源循環プラットフォーム事業へとビジネスを拡大しています。これら周辺ビジネスも合わせてレポートします。

脱炭素のための我々消費者の足元の活動については「1-3 脱炭素のために家庭でできること」としてコメントしました。

なお、当社Tech-Tでは、脱炭素も需要なアイテムとして注目しています。
以下から関連レポートをご覧いただけます。
脱炭素社会 | 次世代モビリティと脱炭素のセミナー・コンサルの「技術オフィス Tech-T」

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1 家庭からの資源プラ

昨年末、学会イベントへの参加のために沖縄に行きました。その際に訪問した、美ら海水族館とその前の美しい砂浜です。

しかし、砂浜に打ち上げられた海藻の合間合間には、漂着したプラスチックスのゴミが散在していました。

「分けて回収すれば資源、捨てればゴミ」という言葉を思い出しました。沖縄本島の西海岸ですので、流出元の多くは東南アジア・中国・韓国と考えられ、日本での資源プラ問題では解決はしません。

1-1 資源プラスチックのリサイクル工場 見学

2022年に稼働を開始した国内最大級の規模を誇る、株式会社TBMの横須賀サーキュラー工場を見学しました。(写真:同社ご提供)

プラント事業部シニアリーダーの野口哲史氏(写真左)とMaar再生材調達プロジェクトリーダーの五十嵐一樹氏(写真右)にご説明・ご案内いただきました。

受け入れ品は、家庭から回収した資源プラスチック、すなわち、食品ラップやレジ袋、食料品等の包装袋、野菜やお魚・お肉のトレイ、洗剤や化粧品など日用品のボトルなど、容器・包装として使用したプラスチックです。

自治体回収の資源プラは、輸送効率を上げるため1個約250kgへと圧縮梱包されます。
写真は、リサイクル工場に搬入された状態。(写真:同社ご提供)

このプラントでは、PP・PE・PSの3樹脂へと再生しています。

図は同社サイトに掲載されているリサイクルフローです。

見学時にご説明いただいた内容の記憶を頼りに、リサイクルのフローをご説明します。

受け入れ品の開梱、ほぐし作業:輸送のための梱包プレス状態から個々へほぐします。

手選別:金属等の異物や危険なリチウムバッテリー等を除去します。
光学選別:樹脂種別分けを行います。

空気選別・分離:食品ラップやレジ袋など風に浮くもの、金属異物などの小物落下物などを分離します。

粉砕
水洗と水流選別・分離:比重により樹脂を粗分別します。

他に、磁気選別での鉄の回収、金属探知機でアルミや銅など検出除去します。

種別ごとに、溶融し再生ペレット化
バージン樹脂のペレット化とは異なり、異物が多くフィルタリングが課題となります。同社では異物が一定量溜まると自動で排出する特殊機構を採用することで、ライン停止を抑止しています。

写真は再生樹脂ペレットです。(写真:同社ご提供)

同プラントでのリサイクル対象樹脂のPP・PE・PS以外のたとえばPET等は選別しますが、それ以外の選別分離できない樹脂成分はサーマルリサイクルとして利用するため、廃棄物固形燃料(RPF)として出荷されます。
それ以外の金属異物等は埋め立て処理されます。

プラントの公称能力は、年間受け入れが4万トン、出荷が2万4千トンです。

同プラントでのユニークな運営としては、横須賀市との取り決めの元、パッカー車で回収した市内の資源プラを工場へ直接配送しています。なお、このプラントは、容器梱包プラとともに、後述するLIMEXも同時リサイクル可能な世界唯一の工場とのご説明でした。

1-2 そもそもの家庭からの資源プラの再資源化について

「容器包装リサイクル法」では、「容器」「包装」を利用して商品を販売する事業者はそれらの再商品化義務を負うと定められています。この義務対応のための業界団体が、公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会(容リ協)です。

理解を深めるために簡単に家庭回収資源プラのリサイクルの仕組みを解説します。
家庭で容器類(いわゆる資源プラ)として分別
 →自治体が家庭から回収
 →必要により圧縮梱包し輸送
 →リサイクルプラントへ
 →再資源として出荷

今回見学したプラントがまさに、再商品化義務を負った事業者からの委託に基づいて再商品化事業者(いわゆるリサイクル事業者、今回取材した株式会社TBMなど)として再生樹脂材料へと加工しているプラントです。リサイクル業者はそのリサイクル量に応じて容リ協から委託費を受け取ります。

リサイクル樹脂のキロ単価は30円とも言われ、その販売だけでは赤字です、委託費(数十円)を加えることで黒字運営が可能となっています。

流通単価は、脱炭素対応のための規制と経済原理で変化していくことが予測されます。リサイクルすべき範囲や量を強化する規制の際は義務者からの委託費用の上昇、EUのELV指令のようなリサイクル材使用義務化に際してはリサイクル材の市場単価の上昇、化石燃料使用量が規制される際もリサイクル材の市場単価の上昇が予想されるところです。

1-3 脱炭素のために家庭でできること
  ~安価で効果的な脱炭素実現のために~

アルミ蒸着品(菓子袋など)はリサイクルできないため、除去する必要があります。リサイクル率と品質の向上、リサイクル費用の低減のためには、家庭での一工夫と容器類の加飾低減が必要だと感じました。

家庭で廃棄する際、可能な範囲で樹脂の種類を選別すること、例えばアルミ蒸着品は可燃ごみへ、PPとPSとその他に分けるなどは効果が大きいと推察しています。すでに自治体によっては、あるいはスーパーマーケットによっては、食品トレイを回収していますが、これは、PS樹脂の選択的な回収に繋がってます。

日本のPETボトルは業界の自主規制で着色されていないためリサイクル率が高いですが、欧州ではカラフルな着色が目を引くものの、リサイクルの障害になっています。かつて、コーヒーフィルターは漂白された純白でしたが、現在の流通品はほぼ100%無漂白です。

PETボトルの「ラベルはがし」はリサイクル率向上に、また「キャップはずし」は飲み残しを抑止する効果があると聞いています。地球温暖化対策を可能な限り安価に対応するためには、一人ひとりの少しの努力が重要です。

安価で効果的な脱炭素実現のために、日本の風土雰囲気になじみ、すでに実績のある家庭での分離回収の推進に期待したいところです。
さらに追加すれば、欧州で一般的な24時間投入可能な分別リサイクルステーションの設置です。多種に分別したままで回収日まで家庭で保管することは負担が大きくなります。24時間投入可能であれば、保管のストレス低減、ステーションのその場での分別投入など、リサイクル用の資源の品質があがることが期待されます。

2 株式会社TBMの脱炭素ビジネス

株式会社TBMは、石灰石を主原料とした環境配慮型素材の開発・製造・販売事業会社として2011年に設立された、ベンチャー企業、今風にいうところのスタートアップでしょうか。そもそもは、環境対応の視点でプラスチックや紙の代替となる新素材LIMEXの展開から始まっています。
同社ではこのLIMEX事業の他に前述のリサイクルプラントなど資源環境事業にも取り組んでいます。

以下、簡単にLIMEX事業と資源循環プラットフォーム事業をご紹介します。

2-1 石灰石から作った紙や容器など

同社の開発特許材料であるLIMEXは、重量比50%以上が炭酸カルシウムなどの無機物で、残りが熱可塑樹脂で構成された複合材料です。シート状に押し出すことで、プラスチックフィルムや合成紙、紙の代替となる材料LIMEX Sheetとなります。写真に示すように紙と同様に印刷も可能です。(写真:同社ご提供)

次の写真のマスクケースは印刷が施されているとともに、折り曲げ、熱溶着で袋構造となっています。紙と熱可塑樹脂のメリットを最大限に生かした応用例です。

LIMEX Sheetは森林資源を使用せず、大量の水を使用する一般的な製紙工程と比べて、水の使用量を97%削減できます。また、LIMEX Sheetはリサイクルも可能ですが、紙のリサイクルとは異なるため、紙類のリサイクルに出してはいけません。

LIMEX Pelletは、熱可塑樹脂と同様の成形加工が可能です。同社ご提供の以下の写真をご覧ください。インフレーション成形によるレジ袋、ブロー成形による液体容器類、真空成形による食品トレイ、射出成形による各種成形品などとして展開されています。

熱可塑樹脂と同様に、幅広く各種の成形加工法に対応しています。
写真左の袋はインフレーションブロー成形、右のボトルは、ブロー成形・押し出し成形・射出成形品の組み合わせです。

【プラスチックと成形加工関連 Tech-Tセミナーご紹介】

オンデマンドセミナー 「超入門 プラスチックと成形加工」シリーズ

オンデマンドセミナーはすぐに受講いただけます。(主催:ものづくりコム)
60-90分程度と短時間ながら、基礎からしっかり学習できます。

出前セミナー 当社主催だから個別アレンジも可能

「出前セミナー」は実際に、
樹脂材料や成形加工品、経年劣化サンプルなどを目の前にして講演します。
しかも、基礎原理から活用課題対応まで フル知識を醸成できるセミナーです。

LIMEX PelletのLCAは石油由来熱可塑樹脂と比較して、5割から7割程度低減されます。LIMEX Pelletを使用した成形品でもそのLCAは1割から3割程度低減可能とされています。同社のウェブサイトで公開されているInnovation Reportでは、詳細なデータが公開されています。

2-2 資源循環プラットフォーム事業

Maar(マール)というブランド名で展開しています。特に注目すべき取り組みは、再生材のマッチングプラットフォーム「Maar 再生材調達」です。リサイクル材料を売りたい企業(シーズ側)と、リサイクル材料を使いたい企業(ニーズ側)が、それぞれプラットフォームに登録します。同社のノウハウの元にマッチングさせるサービスです。

このプラットフォームの最大の特徴は、デジタルプロダクトパスポート(DPP)に対応したプラットフォームであり、トレーサビリティを確保している点です。プラットフォームへの登録は無料で、登録数が増えるほどマッチングの可能性が高まるため、広く登録していただきたいという意見がありました。

また、マッチングの可能性を高めるために、リサイクル材の出所履歴や特性などを明確にし、量の確保を保障するプレミアム再生材の取り扱いを始めたところ、期待通りにマッチング率が高まっています。

最後に、繰り返しとなりますが、当社Tech-Tでは、脱炭素も需要なアイテムとして注目しています。以下から関連レポートをご覧いただけます。
脱炭素社会 | 次世代モビリティと脱炭素のセミナー・コンサルの「技術オフィス Tech-T」


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